第4回工学部新任・若手教授による講演会(報告)
「銀杏祭」に合わせて行われる「ホームカミングデー」の特別企画、工学部・工学部同窓会共催の「第4回工学部新任・若手教授による講演会~私の研究が目指すもの~」が11月3日の15時から16時20分まで工学部G棟1階中講義室で開催された。参加者は同窓会員を主に約40名。
講演会は吉田稔 行事担当副会長(機械・昭和52年卒)の司会で進行した。
講演に先立ち、工学研究科副研究科長代行の重松孝昌先生より、学窓を巣立った卒業生と密にコンタクトをしている同窓会に対し謝意が述べられた。
続いて黒山泰弘会長(土木・昭和50年卒)より、都市再生の分野に携わってきており勉強させていただきたいとの挨拶がなされた。
講演は工学研究科教授で都市計画、都市再生デザイン、景観論、エリアマネジメントがご専門の嘉名光市先生、題目は『新たな都市計画の潮流』。
成熟型社会の到来を迎え、縮小する市街地への対処、ストックを活用した都市再生、地域との協働によるまちづくりへの対応などが求められているとして、大きく分けて3つの実践例が紹介された。
一つ目はエリアマネジメントの活動を支えるBID(Business Improvement District)。地域の不動産所有者や事業者から負担金を徴収し、これを主たる原資として、地域の維持・管理・プロモーションに関し、行政のサービスに上乗せする付加的サービスを行う制度のこと。BIDの導入例として、ニューヨーク125番街(通称ハーレム地区)のクオリティアップ、タイムズスクエアの観光地化、ブライアント・パークの浄化・再生、テキサス州サン・アントニオの水辺のまちづくりが紹介されたのち、2014年に日本で初めて制定された「大阪版BID条例」とその「グランフロント大阪」横の「梅北広場」への適用例も紹介された。
二つ目は公共空間の活用・再生への取組み。『水都大阪』の「中の島オープンテラス」や「北浜テラス」。公園の浄化・再生事業「てんしば」(天王寺公園エントランスエリア)。御堂筋の緩速車道を歩行者空間や自転車道に変える歩行者空間化など、エピソードを交えて紹介された。御堂筋の淀屋橋・本町間を、1階はカフェやギャラリーで賑わいスペースとする高層ビル群で再生する計画についても紹介された。
三つ目は「生きた建築ミュージアムフェスティバル大阪2017」。『生きた建築』とは『文化財』とは異なり、「ある時代の歴史・文化、市民の暮らしぶりといった都市の営みの証しであり、様々な形で変化・発展しながら今も生き生きとその魅力を物語る建築物等」という新しい概念。その大阪セレクション50件は梅田スカイビル、大阪ガスビル、船場センタービルや味園ユニバースビル、食道園宗右衛門町本店ビルなど。フェスティバル当日には各建物の内部も見学できると紹介された。
講演終了後も、大阪の歴史や文化、大阪商人の心意気などについて活発な意見交換がなされた。
なお、講演会の冒頭、重松先生より10月23日に工学研究科長 佐藤嘉洋先生が逝去されたと伝えられ、参加者全員で黙祷を捧げた。佐藤先生は秋田県横手市のご出身。1999年4月に東北大学より機械工学科に助教授として着任され、2002年4月より教授。昨年の第3回講演会では研究科長として開会のご挨拶をいただいた。今年7月3日の工学部教授会と工学部同窓会の役員懇談会でお会いしたのが最後でした。ご誠実で心優しい先生でした。心よりご冥福をお祈りいたします。
東 恒雄(機械・昭和41年卒・理事)